15分文学「拒否」
ぼくんちの近くにはきーちゃんが住んでる。
きーちゃんの口癖は、『んー、やだ』だ。
きーちゃん、公園行かない?
んー、やだ
きーちゃん、ブランコ乗ろうよ
んー、やだ
きーちゃん、アメ玉食べる?
んー、やだ
でも僕は知っている。きーちゃんが本当はいやじゃないこと。だからきーちゃんのヤダは、きーちゃんの、『イイよ!』なんだと思っている。
『きーちゃん、どーしていつもヤダヤダって言うの?』
ある日僕は聞いてみた。
『あのね、ヤダってちゃんと言える子にならなくちゃいけないの。強い女の子はね、ちゃんとヤダって言えるんだって。』
ふーん、と僕は言った。
それって、男の子なんだから泣かないの!って言ううちのママと同じ感じかな?と思った。僕はそんな事言われても、いやなことがあったら泣いちゃうけど。
『きーちゃん、すごいね。
いつもちゃんと、ヤダって言えてるね。』
僕がそういうと、きーちゃんは嬉しそうだった。
『今日もヤダって言えたよって、寝る前にパパに言うの!』
そう言ってきーちゃんはテッテコ帰っていった。
きーちゃんがそう言ったのを、きーちゃんのパパが聞いてたらイイのにって思った。そしたらきーちゃんは、イイよ!ってもっと言えるのにって、僕は思った。
それで僕はなんだかちょっとだけ悲しくなって、やっぱり男の子でも涙は出ちゃうよ、と思いながらほろりと泣いた。
僕はちょっとだけ泣いたこと、ママには言わなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
15分文学
2017.4.17 テーマ「拒否」