15分文学 「子の心親知らず」
コーヒーの匂いが嫌いだった
コポコポと音がすると耳を塞ぎたくなった
これを飲んだらママが出かけてしまうから
これを飲んだらパパは書斎にこもってしまうから
だから私はゆっくりとふかふかのパンを噛み締めて食べた
もぐもぐもぐもぐ
いつもたくさん噛んでえらいね、とママは私を褒める
よく噛むのはいいことなんだよ、とパパも微笑む
そんなのどうでもいい、と思っていた
すこしでも長くみんなでここにいたいだけだ、と。
でもそんなこと言えないから、
あー、うー、んむ。
と可愛く言ってあげる。
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