15分文学とNow I'm thinking about...

15分で書いた文章を時時載せてます、それからあとは心の声だだもれ日記

15分文学 「子の心親知らず」

コーヒーの匂いが嫌いだった

 


コポコポと音がすると耳を塞ぎたくなった

 


これを飲んだらママが出かけてしまうから

 


これを飲んだらパパは書斎にこもってしまうから

 

 

 

だから私はゆっくりとふかふかのパンを噛み締めて食べた

 


もぐもぐもぐもぐ

 


いつもたくさん噛んでえらいね、とママは私を褒める

 


よく噛むのはいいことなんだよ、とパパも微笑む

 


そんなのどうでもいい、と思っていた

 

 

 

すこしでも長くみんなでここにいたいだけだ、と。

 

 

 

でもそんなこと言えないから、

 


あー、うー、んむ。

 


と可愛く言ってあげる。

 

 

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15分文学 テーマ「子の心親知らず」

 

15分文学 「クリスマス」

 


「ニコさん。

明日、泊まりに来ませんか?」

 


私はもう何時間も、このメールを前にして、動けずにいる。

 

 

喜んで。

 


と無邪気に言うべきか、

 


礼央がいるから泊まりは、、と言うべきか。

 


いくら私に恋愛経験が少ないと言えども、泊まりの誘いの意味くらいわかる。

 


私とセックスしたいと言ってくれていることくらいは、わかる。

 

 

 

素直に認めると、私だって行きたい。すごく行きたい。

 


でも。夜に3歳児を放っていくほど、なりふり構わなくは、ない。

 

 

 

「いいじゃん、行っちゃえよ、礼央はグランマにお願いしてさ。もうキスしたんだから、子どもじゃあるまいし、先に進もうぜい」

 

わたしの中の小人が、ずっと囁いてくる。

 


わかってる。そんなこと。


わかってても、キスだけなのとセックスするのとでは、全然違う。

 


会社裏の駐車場、ぐっと抱きしめられたあの感触を思い出すだけで、体が熱くなる。

 

 

私たちが今この関係を、ギリギリ理性の範囲から出ないように保てているのは、その線を超えていないからなのはわかってる。


もし超えてしまえば、わたしはこの関係に飛びついていってしまうのもわかっている。

 

 

 

久しぶりに女として愛される、ということの甘さを、私は随分忘れてしまっていた。

 


礼央がいるのは、彼も知っている。


私が何よりも礼央を優先にするのも、知っている。


その上でこう誘うことが、どれほどずるいのかも知っているだろう。

 


でも、それでも、こんな風に誘ってくるところに、私はくらっと来てしまうのだ。


そしてそれが、ちゃんとクリスマスを外しているというところにも。

 

 

「母親であることと、女性であることは、どちらか一方だけを選ばないといけないことではないと、思う。もちろん、父親であることと、男性であることも、そう」

 

 

その言葉の意味を、噛みしめる。

いい加減、返事しなきゃ。

 


ぼんやりしていると、もう一度携帯がなった。

 

 

「困らせすぎたかな。少し反省しています。また改めて、誘わせてください」

 


それを見た瞬間、手が動いていた。

 


礼央のこと、預けられるか調整してみます。もしそれができれば、是非」

 

 

 


送信を押す指が震えていた。

パタン、と携帯を閉じる。

 

 

 

 

 

どうか私がこの選択を

 

後悔する日が来ませんように

 

 

 



 

 

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15分文学 テーマ 「クリスマス」

2018.12.25

 

 

 

15分文学「落とし方」

「良ちゃん、ダメ」

 

「静かに」

 

ねえ、良ちゃん、ダメ、だってば」

 

……

 

「本当に、ダメ」

 

信じないです」

 

「どうして?」

 

「本当にダメなら、ここに来ないでしょう」

 

……

 

「そうでしょう」

 

良ちゃん、酔っ払ってる?」

 

「だとしたら?」

 

ダメ」

 

「大丈夫ですよ、酔っ払ってるんで」

 

……余計ダメ」

 

「ちょっとだけです。いいからいいから」

 

「私……

 

「わかってます、ダメなんでしょ」

 

 

 

 

 

女の人を落とすのは、簡単だ。

 

いいなと思ったところを褒めて、かわいいと思ったところをかわいいと言って、

 

駆け引きしようなんて思わずに毎日こっちからバンバン連絡して、

 

二人で会う約束、なるべくはお酒が飲めるもの、を取り付けるだけ。

 

 

家で映画見よう、なんて誘いにのって来たらなおよし。

ありがとう、ネットフリックス。

 

あとは機を見て、好意が見えたら、押して押して押して押し倒す。

 

それだけだ。

 

 

酔っ払っているなんて自分で言うと、なおさらいい。

相手は、それならいいかも、と思ってくれる。

 

女の人はかわいい。

 

そんなつもりなかったのに、なんて言う。

 

そんなつもりなかったなんて言いながら、おしゃれしててきたな、とわかる。

 

そんなつもりなかったなんて言いながら、今日は泊まっても大丈夫、と匂わせてくれる。

 

 

でもそこはもちろん、そこを指摘なんかしない。

 

「そんなつもりあったくせに」なんて言わない。

 

そんなこと言う奴は、全然わかってないよね。

 

 

「そうだよねそんなつもりなかったのにね、ごめん」、でいい。

 

それでいいじゃない。

 

否定の言葉を弱々しく繰り返す彼女の首筋に噛みつきながら、

 

こらこらりょーちゃんまたですか、と自分で思う。

 

 

 

ここからはどんな沼が待っているのだろう。

なるべく浅いいといいな、人を無下にするのもされるのも好きじゃない。

 

 

確か彼女には、子どもがいたな。

 

 

良ちゃん、と呼ばれる度にぞくぞくする。

 

人は誰しも天邪鬼だね。悪人ほど善良な顔してるっていうし。

 

まあ、もう今はどうでもいいか。

 

 

 

女の人は情熱的だ。

どんな人も体の奥底で炎を滴らせている。

 

 

全部、舐めとらないともったいない。もう垂れてきてる。

 

 

先の不安でこれを無視するなんてできない。

 

そうやって、夜が溢れる。

 

 

私はいい名前もらったわ、といつも思う。

 

 

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2018.10.10 テーマ「落とし方」

 

15分文学 「月」

 

「月が、とっても綺麗だったらしいんです。私が生まれた夜」


ガヤガヤとした居酒屋。

年に一度の会社の大宴会。


特に参加したい訳でもなかったけど、一年の節目だし、たまには人の近くで飲もうかなと思った。


から。

そんな理由で来た。

 


先月の移動で入ってきたその子は当たり前のよう僕の横に来て、気がついたらビールを注いでいた。

 

 


「あの。僕はいいですよ、他のもっと、何ていうか、偉い人に入れてあげて」

 

 


慌ててそう言うと、

 

 

「菅野さんも十分偉い人です。私からすれば」

と言われた。

 

 

そっか、と思った。

 

 


学生アルバイトとして入ったこの会社はいわゆるIT業界で、忙しい上に、残業も多かった。

 

 


同世代はたくさんいたけど、矢継ぎ早にやめていき、気付けば僕は多少偉いポジションになっていた。

 

 

「でも、本当に、僕はいいんです。人と話すのは、苦手なので」

 

 


ついつい本音が出る。


「そんなこと言われると、逆に困っちゃいます」

 


そう言って彼女は、トスンと座った。

 

 


そうか、困るのかと思い、僕は黙っていた。

 

 


困られるのは、苦手だ。
僕の方がよほど困る、といつも思う。

 

 

 

そして僕が黙っていれば、大抵いつも相手が勝手に解決してくれるから、余計に黙る。

 

 

そんな自分をズルいなとおもって、別の理由で僕はまた、困る。

 

 


そんなことの繰り返しだから、いつもは一人で飲むのだ。

 

自分一人で手一杯で、他者を入れる余裕がない。

 

 

 


那覇の病院で生まれたんです。それで月が綺麗だったから。那月。」

 

「‥‥え?」

 

 

 


そんなポトリと隔離された僕と世の中の間に急に入ってきた彼女に、パコンと殴られたような気分だった。

 


そんな僕をよそに彼女は、ふふふと笑う。

 

 

 

「由来を一緒に聞くと、名前って忘れないんですって。菅野さん、知ってましたか」

 

 

ブンブンブンと首を振る僕の横で、彼女は続けた。

 

「今夜、満月なんですよ。とっても綺麗で。こんな夜は、自分の生まれた日の月ってこんな感じだったのかななんて想像したりするんですけど。でも実際は、満月なんかじゃなくて、三日月だったんですって。」

 

ちょっとがっかりしたんです、初めてそれ聞いた時。

 

そう言ってまた彼女は、ふふふと笑った。

 

 


そして僕はただただ、ほうほうほうとうなづきながら、どこかでカシャン、とエンターが押される音を聞いた。

 


そんなこと、26年生きてきて初めてだった。

 


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15分文学 テーマ「月」
2018.2.22

15分文学 「気がのらないことをする」

 

「書いた?見せてよ」

言われてわたしのリストを差し出した。

 

1、車を運転すること

2、歴史の本を読むこと

3、ハーゲンダッツの抹茶を食べること

4、夜早めに寝ること

5、炭酸水を飲むこと

6、海に行くこと

7、つまみを作ること

8、犬と遊ぶこと

9、テトリスすること

10、トイレを掃除すること

 

「そっちのも見せてよ」

そういって私もしょーたんのリストを受け取る。

 

1、朝は10時まで寝る

2、水曜の夜のテキーラショット

3、新しいもふもふの毛布

4、辛口のカレーを食べる

5、デンタルフロス

6、笑顔の写真を撮る

7、燃えるゴミの日のゴミ捨て

8、タバコミュニケーション

9、新しいパソコンでの動画編集

10、古本の整理

 

「なにこれ?燃えるゴミの日のゴミ捨て?」

「そっちこそ。トイレ掃除そんなに好きだっけ?」

 

そういって互いにわらう。

 

一緒にいるようになって8年。

いまでもお互いの知らないことがあるのはいい。

 

私たちは定期的に、最新の好きなことをリストにして交換する。

それは裏を返せば、相手の好きじゃないことのリストになる。

 

「嫌いなことを聞くよりも、好きなことを聞く方がいいから」

 

しょーたんがそう言ってこれを始めた時はなんだかぎこちなかったけど、今はこのリストを見て、

私はカレーを中辛から辛口に変える。

 

長く一緒にいようとも、気が乗らないことを説明するのは難しい。

でもそれは方法を変えれば、ちょっとだけ楽しい。

 

 

 

 

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2018.01.02   テーマ「気がのらないことをする」

 

15分文学「憤り」

「なんでこの人こんなに面白くない話しかできないんだろう。」

 

 

そう思う相手はだいたい中年のちょっとえらい立場のおじさんか、

 

もしくは自分のことをいけてると思ってる若手の男性だ。

 

 

こっちが聞きたくもない下ネタや、

自分の自慢話ばかり。 

 

 

もしくは、

「女とはこうあるべき!」

 


と昭和な価値観を意気揚々と持ち出してくる。

 

 

それだけでももう帰りたいのに、もっとガックリくるのは

 


そんな話題に飛びつく周りの男性だ。

 

 


俺は家ではなにもやらないだの、

もう嫁に欲情しないだの、

 

 


1つも自慢にならないことばかり。

 

 

自分の価値を自分で下げていることに

 

なぜ気づかないのか。

 


隠れてキャバに行ったことがどうしてそんなに面白いのか、

 

なぜ目の前にいる人の乳のサイズを冷やかしていいと思っているのか、

 

 


まっっっったく、解せない。

 

 

 


男が女より偉いと思ってるんだろうね。

 

 

 

私があんたのチンコのサイズを人前で笑ったら、どうする?

 


私があんたのセックスが下手すぎて気持ちよくないからもうセックスいらないって言ったらどうする?

 

 

 

 

 

人を下げて笑いされるのって、いやでしょう。

 

 

 

 

 

女はいつでも横でニコニコ笑ってると思ってたら大間違いよ!

 

 

 


てことで女性のみなさん。

反撃しようじゃありませんか。

 


こんな男性がのさばることができてるのは、
横で慎ましく笑う役割に、イヤイヤながらも徹している、私たちのおかげ。

 

 

 

反撃しましょう。

面白くない、と反旗を翻してみましょう。

 

 

男が男である、というだけで偉そうにするなんて、今2017年だよ、スーパーナンセンス。

 

 

性別にも恋にも価値観にも色々あるのに

 


古いものを古くからあるからというだけで良しとするの、

 

 

もうやめたい。

 


ダメなものはダメだし

ダサいものはダサい。

 

 

 

 

押し殺してhahahaと笑うの、やめよう

 

 

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2017.8.22

テーマ「憤り」

15分文学「タオル」

「洗濯しといたから。」

 

 

差し出されたタオルは、色褪せた水色。明らかに僕のもの。

「この間の飲み会の後、忘れてたでしょう。」

 

そう言ってつっけんどんに渡されたけど、それは綺麗にたたまれていた。

 

 

その場で匂いを嗅ぎたい衝動にとらわれる。

 

 

「ありがとう」

 

 

「別に。渡してって、頼まれたから」

 

 

愛想のかけらもなくいう君の言葉の裏に隠れた気持ちを探りつつ、うなづく。

 

 

本当に全く気にしてないなら、洗ったりしなくていい、はず。

そんなこと思うのはエゴかもしれないけれど。

 

 

「なくしたと思ってた。気に入ってるやつだから、よかった。」

 

かろうじて、そう言う。

 

 

 

「ヘビロテしすぎだよ。色褪せてきてるなって、干すとき思った」

 

 

 

 

そんなこと言われたら干している姿を想像してしまうし、昔死ぬほどしたピロートークを思い出してしまう。

 

真夏の夜にエアコンの効いた部屋で、一晩中細い腰が絡みついていた、あの夜。

 

 

やめやめ、もう昔の話なのに。

 

 

 

好きだ好きだと言われてあぐらをかいてたあの頃と、全く相手にされてない今。

今は今で悪くないけれど、悶々しすぎて困る。

 

男は昔の記憶を引きずるって言ってたのって誰だっけ。当たりすぎてて、困る。

 

 

君が僕のものだった、夜。

 

 

おこがましいわな、もう一回、なんて。

 

 

そんなこと思う自分にため息ひとつ。いや、みっつ。

 

 

 

 

ハイボールのグラスの中で、氷がカラン、と鳴って

 

調子にのるなよ、と咎められる。

 

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2017.8.4 15分文学 テーマ「タオル」